U23 Japan vs U23 Qatar | AFC Championship 2020 | Group StageAFC

アジアで1勝もできず。U-23日本代表が直面する東京五輪で結果を出すためのジレンマ

 タイで開催されているAFC U-23選手権でグループステージ敗退となったU-23日本代表。東京五輪には開催国枠で出場できるが、「優勝」を公言している日本にとって、今大会で見せたピッチ上の低パフォーマンスを見ると、森保監督の手腕、選手選考を始めとする強化策は果たして奏功しているのか疑問符が浮かぶ。この点に関し、現代表を発足時から取材する川端暁彦氏はこう見る。

■この準備で勝てるほどアジアは甘くない

U23 Japan vs U23 Qatar | AFC Championship 2020 | Group StageAFC

 厳しい戦いが予想されてはいた。天皇杯が1月1日まで行われていた国の代表として、1月2日の夕刻にタイ入り。しかしオフ明けの選手も多く、コンディションはバラバラ。真冬の日本から夜でも30℃近いタイへの移動だ。なかなか状態の上がらない選手も出て来てしまったのも無理はない。唯一の欧州組であり、唯一シーズンの半ばという状態で参加してきた食野亮太郎はさすがに状態が良く、3試合すべてで先発することになったのは象徴的であるのと同時に、欧州組の招集がことごとく断られていたことと合わせて考えると何とも皮肉だった。

 昨年の五輪代表に呼ばれた欧州組は堂安律、久保建英、中山雄太、前田大然、板倉滉、三好康児、安部裕葵、菅原由勢ら実に12名。これに冨安健洋を加えた13名が現実的な五輪候補だが、彼らのAFC U-23選手権への招集はまったく現実的ではなかった。ここで無理な交渉をして本大会での招集に支障が出るのも避けたいところで、食野一人の招集になったことも仕方ない。そして攻守で大駒を欠いた影響がなかったとも言えまい。

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 選手たちは「言い訳はしたくない」という言葉を発していたし、コンディション面についてDF橋岡大樹が「あくまで僕たちの力不足」、FW小川航基が「それが代表選手の宿命なので」と強調していたのもその意気は良し。一方で、この準備で勝てるほどアジアは甘くない、とも思う。

 ただ、誤解のないように言っておくと、「他の国のように前年の段階から合宿を張ってこの大会に勝つための準備をしておくべきだった」と主張したいわけではまったくない。J1リーグの開幕が2月21日となり、1月28日にはAFCチャンピオンズリーグのプレーオフが行われるというのが今年のカレンダーだ。7月の東京五輪まで休みはない。この大会に勝つために早めに集まり、ピークを持って来てしまい、シーズン中に疲れてしまって東京五輪を迎えたのでは意味がないのだ。

 昨年12月にはJリーグのプレーオフも行われる中で、「各選手が合計2週間はオフを取れるように」とパズルを組み合わせるように招集プランが作られており、たとえば12月28日のジャマイカ戦に今回のメンバー全員を呼ぶとなると、これは崩れてしまう。これはしかし、必要な配慮だった。

 実際、4年前のリオ五輪では、この予選に当たるAFC U-23選手権に向けてしっかりとした準備をして見事に優勝を飾った一方、シーズンに入ってから状態の上がらない選手も出てきて、本大会では惨敗となった。今回はすでに出場権を持っているのに、わざわざ同じ轍を踏みに行く必要はない。物凄く嫌らしい見方をあえてすると、この大会が3試合で終わったことによって、選手の新シーズンに向けたコンディショニングや体作りはポジティブな影響を及ぼすことすらあるかもしれない。

■試合内容が本大会に繋がるかは疑問

U23 Japan vs U23 Qatar | AFC Championship 2020 | Group StageAFC

 もちろん、この「相手の懸けているモノが違う」(杉岡)“アジア予選”での経験が、真剣勝負のタフネスを求められる中で頼れる選手を見極めるのに格好の舞台だったのは確かだ。

 一方で、今大会の試合内容が五輪本大会に繋がるかと言えば、元より微妙な部分もある。これはA代表でも直面するジレンマだが、アジアにおける日本は相手が引いて守りを固めてくる立場なのに対し、世界大会では逆の現象がメインとなるからだ。

「(五輪では)相手がベタ引きしてこういう展開になる確率は少ないと思う」と杉岡が率直に語ったように、大会を通じて浮き彫りになった課題は後方に引いて固めてくる相手に対する攻め手不足だが、これがそのまま五輪本大会での課題になるかは微妙なところだ。

 そもそも、この代表はシステムの特性もあって、相手がボールを持って攻めに出てきているときのほうが明らかに強い。昨年の準優勝したトゥーロン国際大会や、アウェイでブラジルを破った国際親善試合はその最たる例だろう。

「やっぱり5枚が後ろにいるので、そこで優位をとれるし、前にスペースがある状況なら違いを見せられる選手も多い。ブラジル戦がそうでしたけど、(相手がボールを持つ展開のほうが)強みを出しやすい」(杉岡)

 五輪本大会も一方的に殴られる展開は避けたいところでボールはある程度握れるようにしておきたい。また試合展開によって相手がベタ引きすることもあり得るので、今回の教訓が生きる可能性はある。ただ、アジアの戦いと、世界での戦いで求められるモノがちょっと違ってくるのはあらためて認識しておくべきだろう。

■招集ごとにボタンを掛け直している

Coach Hajime Moriyasu | U23 Japan vs U23 Saudi Arabia | AFC U23 Championship 2020 | Group StageAFC

 一方、欧州組が大幅に増えていく中で、チーム作りが積み上げ切れていないことがあらためて浮き彫りになった大会でもあった。「毎回メンバーが違って、それぞれの特長もあるので」と杉岡が言うように、招集機会があるたびにボタンを掛け直しているような印象があるのは否めない。そして今大会に収穫があったとすれば、その点について「次の合宿に誰が呼ばれるにしても、今回出た課題をちゃんと共有しないといけない」(橋岡)という問題意識を選手側が強く持ったことだろう。

 相馬はこの点についてこう語る。

「今回みんなで話し合ったのは、違うメンバーが集まったときに、今回の経験がなくなっちゃうのではないということ。ここから五輪に向けてチームを作っていく中で、この経験というのをメンバーが入れ替わったとしても全員で共有していく。そこをしっかりやっていきたい」

 当たり前と言えば当たり前なのだが、狭い五輪代表の「枠」を巡ってアピールを求められている中だから、言うほど簡単ではない。ただ、この強烈な敗戦の経験は、その意味で財産になるかもしれない。

 また今大会で共有しておくべき課題はカウンター対応やボール保持時のリスク管理の部分、あるいは引いた相手に対する崩し方のバリエーションといった部分が挙がりそうだが、もう一つ忘れてはいけない要素がある。

 VARだ。

「3試合を通して、VARで3点取られてしまっている。(反則を)『誰がやった』とか『何が悪かった』とかそういう話ではなく、あらためてこの制度が導入されて大会が行われるようになっている。変な言い方ですけど、ゴール前では相手が積極的に倒れてくる。その戦い方も学べた大会だった」(相馬)

 幸いにもと言うべきか、今季からJ1リーグではVARが採用されることとなり、選手たちが経験を積むことが可能になった。通常の審判では見落とすようなプレーが引っかかってくるので、感覚を掴んでおけるのは好材料だろう。「誤審をなくす」という点が強調されるVARだが、この導入によってやはりサッカーが変わるのだから、「国際大会で勝つ」という観点からも国内の試合で経験しておきたいシステムである。

■3月は海外組を招集見込み

2019_11_16_Doan(C)Kenichi Arai

 東京五輪はFIFAルールによる拘束力がないため、現時点ではそもそも誰が呼べるのかも不透明な状況にある。ただ、これは日本以外の欧州でプレーする選手を多く抱える各国は似たようなものなので、過度に怖がる要素でもない。

 国際Aマッチデーに行われる3月のキリンチャレンジカップには、A代表組を含めたベストに近い陣容が組まれる見通しで、本格的な仕上げのチーム作りもスタートする。AFC U-23選手権は手ひどい敗退に終わったものの、別に何かが終わったわけではない。戦訓をしっかり残せるならば、無駄になる経験でもない。脳天気に構えるのも違うが、変に悲観するのもまた違う。勝負はあくまで半年後、7月の東京五輪である。

取材・文=川端暁彦

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